悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました


 やっぱり、自力で薬草を取る手段が思い浮かばない以上、町に帰って事情を説明するしかないかしら。

 向こうだって無理難題を要求したのは自覚しているだろうし、交渉の余地があるかもしれない。


「ベルナルド様は、このまま古城にお戻りになるのですか?」

「いや、近々予定されているモンペリエ国での公務に向けて王都の城へ行くつもりだ。お前は町へ帰るんだろうな?」

「はい。薬草は私ひとりではどうしても手に入りそうにない場所に生えていたので、別の課題で雇ってもらえないか相談してみます」


 彼は眉を寄せて真剣な表情をした。

 詳細も告げずに危険な森へ送り込んだ職場を警戒しているようだ。代わりの課題が出されても、同じ目に遭うのではないかと気がかりらしい。

 やがてため息をつかれる。


「自生地に連れていけ」


 予想外のセリフに戸惑うものの、例の草原へと案内した。

 ベルナルド様の様子をうかがうと、状況を察して深い谷を眺めている。


「お前の言う草はあれか?谷の向こうへ行ければいいんだな?」

「そうですが……まさか、獣の姿で飛び越えるおつもりですか?」

「そこまでする距離ではない。半分で足りる」