「寒いのか」
小さく尋ねられて、はっとした。無意識に両腕をさすっていたのに自分でも気がつかなかった。
雨に濡れたせいで体温が奪われたのか、少し肌寒い。しかし、この狭い洞窟で火を起こせば、煙が充満して逆に命が危ないだろう。
「平気です。それより、体調は大丈夫ですか?」
「心配は無用だ。薬を飲んでいれば、そんなにヤワではない」
ゆっくり立ち上がった彼は、洞窟の奥へと進んだ。首を傾げて見つめていると、上着に手をかけて脱いだ彼にギョッとした。
濡れた白いシャツから透ける肩に動揺が走る。
着替え……は持っていなさそうよね?濡れた服を乾かしたいとか?
つい、視線が釘付けになっていると、美しい横顔がこちらを向いて眉を寄せられた。
「背を向けていろ」
「はっ、ごめんなさい」
視線を逸らして高まる胸を押さえる。
数分後、柔らかな毛の感触が背中に触れた。背後から体によりそう真っ白な毛並みに目を見開く。
それは、古城の庭で毎日ともに過ごしていたラヴィスだ。
懐かしい友の姿に固まって眺めていると、くいっと服の裾をくわえられて引き寄せられる。ぽすんと飛び込んだ先はモフモフの体だった。



