悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました


 さっき助けてもらえなかったら、確実に餌にされていただろう。そんな危険な場所に放り込まれていたなんて、疑いもしなかった。

 お目当てのボテン草に希少価値があるのも、北の森での採集が難しいため、めったに手に入らないからだとしたら納得がいく。

 ベルナルド様は静かに息を吐いた。


「雨があがったら、町へ帰れ」

「それは出来ません。明後日までに指定された薬草を持ち帰らなければ、無職になってしまいます」

「お前はまた厄介な人間に絡まれたようだな。鋭い爪も牙も持たない子兎を、このような場所へ放り込んだ奴らは信用に欠ける」


 私は大好きなあなたを思い出さないで済む場所で暮らしたいから、悪条件をのみこんで働こうとしているのよ?

 喉まで出かかったセリフは押し込めた。国外追放された若い薬師を雇ってくれる職場はそうそうない。世間は思っていたよりも甘くないと痛感する。

 それでも必死にあがこうとしているのを察してくれたのか、彼はそれ以上苦言は呈さなかった。