悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました



「グァォ……!」


 空気がぶるぶる震えるほどの吠え声に、狼達は「きゃいん」と跳ねた。獣の本能で勝ち目がないと判断したのか、一目散に横をすり抜けて洞窟から飛び出していく。

 その背中をにらむ彼は、姿が消えるまで私を離さなかった。

 やがて腕の力が抜け、震える声で尋ねる。


「ベルナルド様……どうして、ここに」


 それはたしかに、古城で別れたはずの陛下であった。

 夢か現実かわからず混乱していると、濡れた前髪をかきあげた彼の鋭い視線に射抜かれる。


「それはこちらのセリフだ。北の森がどんなに危険な場所かわかっているのか」

「私は新しい職場で雇ってもらうために、目当ての薬草を採集しに来たんです。危険ってどういう意味ですか?」

「ここはノラの獣が巣食う無法地帯だ。多くの旅人が被害に遭っている。先ほどのお前のようにな」


 ベルナルド様は、これ以上犠牲者を出さないために、仕事として獣のナワバリを限定している最中だと説明した。

 身の毛がよだつ話に血の気が引く。