危なかった。少しでも前に進んでいれば、命がなくなっていただろう。
草原までは距離があり、とうてい自力では飛び越えられない。目を凝らして見つめると、やはり自生しているのはボテン草らしく、お目当ての品に手が届かないもどかしさが込み上げた。
どうしよう。橋は無いようだし、向こうまで鍵縄を投げて、ターザンの要領で渡るとか?
でも、失敗して落ちたらひとたまりもない。辺りを見渡すが、こちら側にボテン草は自生していなかった。
与えられた期間は今日を入れて三日だ。闇雲に森をさまよっても、時間を無駄にしてしまうかもしれない。
まさか、無理難題だということを分かっていて課したの?
意地の悪い企みに気づいて、怒りとも悲しみとも似つかない苦しい気持ちになったが、ここであきらめたくはなかった。
自分でやると言ったのだ。今も昔も、頼れる人は周りにいない。
ーーポツ。
ふと、頬に雫がたれた。顔を上げると空は雲に包まれており、さっきまで輝いていた太陽が姿を消している。
徐々に雲行きが怪しくなり、数分後には大粒の雨になっていた。
なんて運が悪いのかしら。とにかく、どこかで雨宿りをしてやり過ごさないと。



