「ぜひ、やらせてください。期限はありますか?」
「明後日までだ。それ以上は待たない。こっちも他の仕事が詰まっているからな」
意地悪な言い方に気分が下がったが、ひきつった笑みでやり過ごす。
なんて投げやりな人なの。機嫌が悪いと、周囲に当たってしまうタイプ?周りも助けてくれる気配がないし、経験のある自分は目下の者になにを言ってもいいと思っているんだわ。
嫌われたり、小言を言われたりするのは慣れっこよ。屋根のある場所で生活ができるなら、雑草のようにたくましく生きていかなきゃ。
紐をつけたカゴを肩にかけて建物を出ると、デスクでパソコンに向かっていた職員たちがくすくすと口角を上げる。
「ひどいなぁ。明後日までなんて無理でしょう。そもそも北の森は野生の獣がウロチョロする危険地帯だ。それに、あの娘はただの人間。ボテン草が自生する草原は獣人でなければ近づけないのに、新人いびりですか?」
「もしも採って来れなかったら、契約違反とでも言って丸め込めばいい。あの容姿は薬師として働かせるより、裏取引の商売に役立てた方が儲かりそうだ」
「相変わらず、悪い人ですねぇ」
黒い会話が交わされているとも知らず、私は北の森へと向かったのだった。



