悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました

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「ウチで働きたい?」

「はい。薬師のお仕事がもらえるのであれば、なんでもします」

「ふぅん、若手はすぐに辞めていくからねぇ。あまり信用していないんだけど」


 古城を出てから三日かけて王都に近い町に辿り着いた私は、役場の案内を頼りに髭面のおじさんと対面していた。

 慣れない環境で身元が安定しない若手を雇う職場はそうそう出会えなかったが、やっと面接までたどり着けた。

 社宅があるのに惹かれるけど、給料が安いし、職員は皆やる気がなさそうで横柄な態度なのが気になるわ。やっぱり、経験が少ない若手な分、なめられているのかしら。

 王都の方がより環境の良い職場が見つかるかもしれない。

 しかし、王都でベルナルド様の姿を目にしてしまったらどうしようもなく苦しくなる気がした。

 どうせなら、二度と会うことのない場所で暮らしたい。


「ちょうどいい仕事がある」


 男性が手渡して来たのは一枚の紙だ。トゲトゲした葉の植物が描かれており、見覚えはなかった。


「これは、町の近くにある北の森に自生するボテン草という薬草だ。草を見分ける観察眼を試したい。カゴいっぱいに採ってこれたら雇ってやろう」


 与えられた課題はシンプルで、薬師ならばこなせて当然のレベルである。