《ラヴィス視点》


 扉が閉まり、部屋が静まり返る。

 仰向けのまま目元に腕を乗せ、息を吐く。

 誰も巻き込まないつもりだった。忠誠を誓う臣下も、命をかけて国を守る同志も、平穏な生活を支えるメイドも、不安にさせるだけなら告げないほうがマシだ。

 もしも病にむしばまれて道半ばで命が散ったとしたら、代々王族の血を繋いできたヴォルランの家系が途切れる。

 こんな血など、残してはならない。必ず愛する者より先に死ぬとわかっていて、伴侶など持てるものか。

 子を成して生まれてきた尊い命も、また同じ病になる。いくら獣の力が強く優れた血統だろうと、この体は呪われているのだ。


『彼女は知っておくべきだと判断しました。生涯の伴侶になるお方でしょう?』


 ドミニコラの声が頭にこだまする。

 なにを勝手なことを。俺はどれだけ未練を残さず別れられるかを考えているのに。

 エスターをイバラの道には引き込めない。