ドミニコラさんも全ての辻褄が合って、病の療養をカモフラージュするための関係だと理解したらしい。

 だが、その表情は納得がいっていない様子だ。

 話が終わらないうちにベルナルド様は無理やりベッドから降りた。しかし、床に足をついた途端、足腰に力が入らないようで、がくんと倒れる。

 重い体を抱きとめて支えると、耳元で怒りを込めた唸り声がした。


「ドミニコラ……貴様、盛ったのか」

「人聞きが悪い。体調を押して公務に出ようとするのはお見通しでしたので、少し強めに調合したまでです。自覚しておりますので、いくらでも性悪とののしりください」


 ぐるる……と喉を鳴らす陛下は私の肩を放してベッドに仰向けになる。

 こちらから顔を背け、低く怒鳴った。


「出て行け。俺が喉笛を噛み切る前に」


 震えるほど恐ろしい。

 私の前ではめったに放たない獣の殺気に、喰らい尽くされそうになる。

 あぁ。やはり私と彼はこんなにも遠い。


「行こう、エスターさん」


 手を引かれて医務室を出た。

 心は凍りついたように冷たくて、なぜか涙がこぼれそうだった。