中折れ帽をとって膝に置いた彼は、やや湿った金の長髪をゴムで縛った。
容姿は中性的で三十代後半くらいに見えるが、耳が尖っているため年齢不詳のエルフらしい。
妖艶な色気を醸しだすドミニコラさんを前に緊張しつつ、おずおずと尋ねる。
「あの、ベルナルド様は大丈夫なのですか?」
「あぁ、いつもの発作だ。心配はいらない。本人は慣れているよ」
「いつもの?」
慣れている、だなんて。あの苦しそうな表情が頭にこびりついて離れない。本当に死んでしまったのかと思って、怖くて仕方がなかった。
「君は、なにも聞かされていないのかい?」
ぎこちなく頷く。
それは、彼が私に隠していた秘密と通じているはずだ。
すると、ドミニコラさんはベッドサイドの椅子から立ち上がり、布団を胸までめくった。ベルナルド様のシャツに手をかけ、ボタンを首元から外していく。
ぎょっとして目を逸らそうとしたが、その前に視界に飛び込んできたのは胸元に広がる濃い痣だった。
黒色の痣は打撲痕ではない。まるで、体に刻み込まれた刺青のようだ。
「これ、は」
「主の侵されている病の症状さ。王族は代々この病と闘い続ける」



