そのとき、ログハウスの中から物音がした気がした。薬室のカーテンが揺れている。
いちるの望みをかけて飛び込んだ。すると、視界に映ったのは並ぶ棚の向こうに覗く足だった。誰かが床に倒れている。
素早く駆け寄り、その顔を見て血の気が引く。
「ベルナルド様!」
青白い顔で横たわっていたのは陛下だ。目元は薄くクマが出来ていて、ぐったりする彼は目を開ける様子がない。
「起きてください!いったい、どうして」
漆黒の正装の袖から伸びる手をとった。生きているとは思えないほど冷え切っておりぞっとするが、脈はある。体はずぶ濡れで、雨が彼の体温を奪ったのだと察した。
話を聞きつけて捜索に加わっていた使用人達もぞろぞろと薬室に駆けつける。皆、状況を理解しきれずにざわめき、レンテオさんは絶句していた。
死んではいない。でも、徐脈だわ。呼吸も浅いし、このままじゃ……!
「道を開けてくれ」



