悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました


 もし、移動の間に服が汚れたら、王都の城で着替える時間も必要だよね。早めに声をかけて出発してもらったほうがいいかもしれない。


「私、ベルナルド様にレンテオさん達が待っていると伝えてきます」

「ありがとう。助かるよ」


 勝手に塔に出入りするなと怒られたが、今回は業務連絡なので差し支えないだろう。

 緊張感に包まれる中、北塔の陛下の自室へやって来た。扉の前で深呼吸をする。


「エスターです。着替えはお済みですか?レンテオさん達が到着しました」


 ノックして声をかけるが返答がない。まさか、まだ寝ているとか?

 氷のような冷たい瞳が脳裏をよぎったが、会談に遅れてはまずい。意を決して重い扉を押す。


「し、失礼します。ベルナルド様……?」


 部屋の中に彼の姿はなかった。

 驚いて目を見開くと、アンティークの棚がやや崩れているのが視界に映る。手前に飾られた品だけ倒れており、うっかり手をついて触ってしまったように思えた。

 私があげたコロンの蓋が開いていて、ピンクの液体がこぼれたままだ。


 なにかがおかしい。