初めて見るこわばった顔に声をかけられずにいると、やがて深く呼吸をした彼に体を持ち上げられた。
軽々と横抱きにされて、流れそうになった涙が引っ込む。
「ま、待ってください。早く片付けをして薬品を整理し直さないと」
「腕の手当てが先だ」
否応なしに力強い腕に抱かれ、ボナさんの元へと運ばれた。
何度謝罪を口にしても「もう良い」と咎めない態度に申し訳なさだけが募る。
「騎士が捕らえたカティアという女は、ブルトーワ国の役人に引き渡した。我がエピナント国の司法では裁かない」
ベルナルド様から伝えられた言葉が信じられなかった。
居城の植物園に不法侵入されて薬室を荒らされたのに、簡単に身柄を引き渡したの?地元に戻された彼女は、このまま守られて罪も償わずにのうのうと生きるかもしれないのに。
こちらの戸惑いを読み取ったらしい彼は、包帯の巻かれた華奢な腕を撫でる。
「俺の妻に傷をつけた奴は極刑に値するが、それだとエスターが気に病むだろう。俺はお前が側にいる限り、お前の信じたヒトのままでいると決めたのだ」



