悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました


 町が見えなくなって、初めて泣いた。犯人だと決めつけて石を投げた奴らの前では弱さを見せたくなかった。

 自分に恥じない生き方をしたい。私には、薬師としての知識と技術がある。どんなに風当たりが強くても、諦めなかった夢がある。仕事だけは裏切らない。


 そうして、どのくらい歩いただろう。

 すでに国境は越えていて、生まれ育ったブルトーワ国から、隣国の領土に入っていた。旅人も一切通らないらしい道の薄汚れた木の看板には、“エピナント”と記されている。

 エピナント国は、ヒトだけでなく獣人やエルフなど、様々な種族が共に暮らす国だと聞いていた。言語はブルトーワ国と同じに統一されている。

 閉鎖的な小さな町で生きてきた私は噂しか知らないが、エピナント国の陛下は二十八歳の若き君主で“慈悲の心を持たない冷酷な獣”と呼ばれ、人々から畏怖されているらしい。

 やがて、木の生い茂った森に足を踏み入れた。頬に雫が落ちてくると気づいた数分後には大粒の雨となり、真っ暗な曇天は嵐となった。