とっさにマントを掴むと、想像よりはるかに軽い体は難なく引き寄せられる。抱きとめた衝撃でフードが舞い上がった。
ハーフアップにまとめたクリーム色の髪がなびき、敵意に満ちた紫の瞳がこちらをにらむ。
はっとした瞬間、強く突き飛ばされた。
体が打ち付けられた先は厳重保管の紙が貼られた棚だ。唯一、私が手をつけていなかった領域だが、鍵が壊されていたために勢いよく扉が開いて、中の小瓶が床に落ちる。
「きゃあっ」
割れた破片が飛び散り、つい顔を覆うと、その間に犯人は素早く薬室から飛び出した。逃げる背中を追おうとするが、腕に痛みが走る。
まずい、血が出てる。背中を強打したせいで呼吸がうまくできないし、足が震えて立てない。
顔を歪めた瞬間、切迫した声が耳に届いた。
「エスター!」
現れたのはベルナルド様だ。普段は少しも焦らない彼が、倒れる私を見るや否や血相を変えて側にしゃがみ込む。
「なにがあった」
「薬室が荒らされていて……すみません、逃しました」



