悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました



「あの、私そろそろ仕事に戻りますね」


 意識しているのを隠してソファから立ち上がると、優雅に足を組む彼は「今日も励め」と静かに見送った。

 古城を出て、敷地内の植物園へと歩きながら眉を寄せる。

 向こうは照れもしていない。私をペットの子兎とでも思っているのかしら。なんとなくモヤモヤするけど、仕事中は頭を切り替えなきゃ。

 ベルナルド様から借りた黒い傘を閉じて温室に入ると、ふと違和感を感じる。

 いつもより涼しい?扉は開放しないし室温調整には特に神経を尖らせているのに、おかしいわ。

 胸騒ぎがして、早足で薬室に急ぐ。するとドアノブに手をかける間際、中からパリン!とガラス製の物体が割れる音が響いた。

 勢いよく扉を開けると、目に飛び込んできたのは黒いマントを着たシルエットだ。

 床には薬品棚に並べていた瓶が散乱しており、いくつか中身が溢れてしまっている。大事に乾燥させていた薬草もぐちゃぐちゃで原型をとどめていない。

 犯人は見つかると思っていなかったのだろう。フードをまぶかに被っていて顔は見れないものの、鉢合わせたショックで動揺している。

 無遠慮に土足で机に上がり、窓から逃走しようと足をかけた。


「待ちなさい!」