・・・
「いい子じゃないか」
「でしょ」
ハナの出してくれたお茶を飲みながら、ロイはほっと息を吐いた。
「ハナなら、気に入ってくれると思ってた」
この少し離れた先で、ロイは“療養生活”を送っていた。
今ではもう、それが不幸だったとは微塵も思わない。
あの頃、あの場所で過ごしていなければ、今の自分はいない。
そうなれば、ジェイダと逢うこともなかっただろう。そう思えば、感謝の念すら沸く。
だが、あの頃のアルバート少年は違った。
小さな体に、様々な苦労事を背負った気でいたのだ。
それを諭してくれたのが、デレクでありロドニーでもあり、目の前にいるハナでもあった。
「……余程、酷い反対でもされたかね。……坊っちゃんの方が傷ついた顔してるよ」
声に出して笑ったつもりだったが、実際に口から漏れたのは乾いた音だけだった。
「予想はしていたんだよ。なのに……大打撃。この国で暮らす人が、あれほど彼女を遮断してしまえるものかと」
ショックだった。
分かっていても、どこかで期待していたのだ。
もちろん悪人もいるだろうが、この国の大半は善人たちだ。だからきっと、理解してもらえると。
「ジェイダは辛い思いをしてまで、クルルを、トスティータを救おうとしてくれる。いや、実際に救ってくれたんだ。そんな人を、どうして……! 」
それだけ言われても、ハナにはさっぱりだ。
そんなもの説明したくもないのに、止まらなかった。
「どうして、あんなにまで憎むことができる? 何の罪もない、それどころか恩人ですらある女の子を」
二度と繰り返してはいけないことが、この陸続きで起こった。それでも、道を見誤ったのはジェイダではない。あの場に押し寄せた人々でもない。
「……クルルに行くんだろ。可哀想に、同じ思いをするだろうね」
「僕は、覚悟できてるから」
キースに言ったように、歓迎モードではないことは確かだ。だが、ハナは首を振る。
「坊っちゃんも心配だけど、あのお嬢さんのことさ。今のあんたと、同じ傷を負うだろう。……支えておやり」
――大切な人を、受け入れてもらえない痛み。



