翡翠の森


彼女が剣を振るう姿を、ジェイダは幸運にもまだ目にしたことはない。


(でも、これから私が判断を誤れば、その機会が増えてしまうかもしれない)


一瞬でも迷えば、それも同じだ。
正しい選択を瞬時にしないといけない場面が、これからあるかもしれないのだ。
だってジンは、何があっても守ってくれようとするだろうから。


『何かあれば、私を盾にして逃げて下さいよ』


以前、そう言われたように。


(ジンを守る為に、間違いは許されない。そんな局面があるかもしれないって、覚悟しておかなくちゃ)


武術の心得も何もない。
それでも守らなくてはいけないものが、だからこそ守れるものが。きっとあちこちに、たくさん溢れている。

「ありがとう。私もジンが好き。大好き」


女性にしては、少し広めの肩にもたれかかる。
甘えるジェイダに、彼女は意地悪に目を光らせた。


「ロイ様が羨ましがるわね。あの方は、肝心なところで押しが弱いのよ」


まるで見てきたかのような口ぶりだ。……まさかとは思うが。


「このことが片付くまで、我慢なさるおつもりかしらね? 不謹慎だけれど、貴女がクルルの乙女、であるうちは」

「な、何を言って……。私に特別な力はないし、そもそも、それとこれとは関係ないと思う! 」


(……たぶん)


祈り子は乙女と決まっているらしいので、未婚の少女が選ばれてきたが、別に確認された訳でもない。
元々ジェイダは普通の女性であるから、そうでなくなったとしても……。


(って、だから! そこでロイを出さなくていいし!! )