頭の中を読まれたようで、いっきに顔が赤くなった。
「な、何が?」
「もう~、いいかげん認めなよぉ」
真由ちゃんがもどかしそうに言う。
声のボリュームは小さいし、シンさんが携帯で音楽を流しているから、まわりに話を聞かれることはないと思う。
でも、近くに座っているアキさんには聞こえてしまうかもしれない。
図星をつかれた恥ずかしさと、アキさんにバレたくない気持ちと。
そのふたつが混ざり合い、心にもない言葉があたしの口から出た。
「あたし別に、あいつのことなんか好きじゃないよ。好きになるわけないじゃん。
偉そうだし、自己中だし、ムカつくこと多いし。
それにほら、親がお金持ちなんでしょ?
それも気に入らないんだよね、しょせんお坊ちゃんのワガママっていうか――」
あたしはそこで言葉を切った。
正確には、突然の物音に驚いて言葉が切れた。
音の正体は、思いきり蹴られて倒れたイス。
蹴ったのは――アキさんだった。
「悪ぃ、俺帰るわ」
しんとした部屋で、アキさんが冷たく言って立ち上がった。



