「……まさか」
「うん。そのまさか」
真由ちゃんの返事を聞いたあたしは、心の中で飛び上がるほどビックリした。
毎日いっしょにいたのに、今までまったく気づかなかったんだ。
まさか真由ちゃんが、ミツルに恋をしていたなんて……。
「でもさぁ」
興奮を隠しきれないあたしに、真由ちゃんが声のトーンを落としてつぶやく。
「あいつ、あの通り女好きだから前途多難だよ」
そう言って肩をすくめ、困った顔でミツルの方を見た。
ミツルは少し離れた席でシンさんと盛り上がっていて、あたしたちの内緒話に気づく気配もない。
でもよく聞くと、彼らの会話は「あの女子高の子はレベルが高い」とか「こんど合コンやろう」とか、女の子絡みばっかりだ。
「で、でも、あんなの気にする必要ないよ」
あたしは妙にムキになって否定した。
「ほら、真由ちゃんだっていろんな男の人をカッコイイとか言ってるけど、本命はひとりじゃん? きっと彼もそうなるよ」
「うん、ありがと。がんばるね」
全然フォローになっていないあたしの励ましを、素直に受け取ってくれる真由ちゃん。
4月に出会ったばかりだけど、今ではもう大切な友達だ。
真由ちゃんの恋を応援したい。
真由ちゃんには好きな人と両想いになってほしい。
そしてできれば、いつかあたしも――。
「莉子ちゃんも、健吾先輩のことがんばるんでしょ?」
「えっ?」



