健吾と話すときのアキさんは、楽しそうな顔をしていると思う。
シンさんやミツルに対しても物腰はやわらかいけれど、健吾にはもっと、親密な表情を見せている気がする。
そしてそれは健吾も同じだった。
アキさんの前ではいつもより子どもっぽくて、まるでガキ大将がそのまま大きくなった感じだ。
健吾は突然立ち上がると、窓を少し開けて窓際でタバコを吸い始めた。
どうしてわざわざ離れた場所で吸うんだろう、と思っていると
「月島先輩、たぶんあたしたちに気を使って窓際まで行ってくれたんだろうね」
と真由ちゃんが耳打ちしてきた。
そっか。
たしか以前もあたしが咳をすると、健吾はすぐにタバコを消してくれたっけ。
「優しいな~、先輩。あんな人が彼氏なら最高だろうなぁ」
「……真由ちゃんは、好きな人いないの?」
「いるよ。まだ片想いだけど」
予想外の返事にあたしはぎょっとした。
「しかもね、この部屋の中にいるんだぁ」
小声で大胆なことをささやく真由ちゃん。
相手は誰?
なんて聞くまでもない。
真由ちゃんの視線が、はっきりとひとりの人に向けられていたから。



