今日は健吾のバイトが休みらしく、この後どこかに遊びに行く予定らしい。
おしゃべりが一段落すると、3人は「じゃあ行くか」と扉の方に歩き始めた。
あたしにはバイバイすら言ってくれなかったので、正直、寂しく感じた。
そりゃあね、健吾たちがこの教室に来たのは、あたしに会うためじゃないってわかってるけど……。
3人の話し声が席から遠ざかっていく。
あたしは椅子に座ったまま、のろのろと鞄の中をいじったりしていた。
「おい、莉子」
扉の前で、健吾がふり返って言った。
「何してんだよ。早く行くぞ」
「え?」
呆けた声を出すあたしに、健吾はプッと笑う。
「お前も一緒に行くんだろ?」
「あ………うんっ」
あたしはあわてて立ち上がった。
……健吾はいじわるだ。
あたしを喜ばせて、どんどん好きにさせていくんだから。



