今回の席替えであたしの隣になったのは、まだ一度も登校していない“幻の生徒”。


机と椅子だけはあるのだけれど、そこに人が座っているのをまだ見たことがない。


「莉子、お前なあ」
 
ミツルがハァ~っとため息をついた。

「前に俺が話したの、忘れてるだろ?」

「うん」
 

正直にうなずくと、ミツルはあたしの机にドカッと座り、「アキさんってのはなぁ」と話し始めた。


「健吾さんの幼なじみで、俺の中学の先輩。橘アキさんだよ」

「先輩がなんで同じクラスにいるの?」

「出席日数が足りないんだってさ。ほんとなら今は健吾さんたちと同じ、3年なんだけど」