深夜の道路はガラ空きで、家まで30分もかからない。 アパートの前であたしを降ろした健吾は、当たり前のように「またな」と言った。 あまりに自然だったから、初めてそんなことを言われたと気づいたのは部屋に戻ってからだった。 シチューのにおいが充満する、誰もいない暗い部屋。 カーテンを開けると、アパートの下をバイクが走っていくのが見えた。 遠ざかっていくテールランプを、 ずっとずっとあたしは見ていた。