健吾が向き直ってエンジンをかけたので、あたしはおずおずとその体に腕をまわした。

服の上からでもわかる逞しい筋肉、広い背中に、戸惑いを覚えた。


「お前さぁ」
 

バイクが走りだす直前

健吾は前を見たまま言った。


「俺に女がいても関係ないとか言うなよ」


「………」


「関係あんだから」
 



最後の方は、バイクにかき消されてほとんど聞こえなかったけど。


あたしにとって

恋を加速させるには充分な言葉だったんだ。