「いや、別にさ、あんたに彼女がいてもあたしには関係ないしねっ」


ああ、もうダメだ。
完全にバレたよ、あたしのバカ!
 
頭の中で自分を罵っていると、突然、健吾が笑いだした。


「お前、ほんとにおもしろい奴だなー」

「は? ……きゃっ!」
 

腕をひっぱられ、強引にバイクに乗せられた。

こっちの動揺なんかお構いなしの健吾に、完全にペースを崩されてしまう。


「ちゃんとつかまっとけ。送ってやるから」

「け、結構です!」

「んなこと言ってっと振り落とすぞ」

「はい!?」

「さっきお前、俺のこと殴ったしな」
 

痛いところをつかれたあたしは、うっと黙りこむ。
 
すると健吾はおもむろにふり返り、

「たいした女だ」
 
と、悪ガキみたいに笑った。
 


……間近に感じる香水のにおい。


心臓が、音をたてる。

木々のざわめきを消すくらい大きく。