耳障りなミサキの金切り声を聞きながら、あたしにもやっと状況が見えてきた。
つまり――
あたしはこのふたりの痴話げんかに巻き込まれただけなんだ。
最近ちょっと健吾と親しくしていたから、その噂でも聞いたミサキが勘違いした、たぶんそんなとこ。
なんだ……
そっか。
健吾、やっぱり彼女いるんじゃん。
だったらもっと彼女を大事にしてあげればいいのに。
あたしのことなんか、
最初からほっといてくれればよかったのに……。
得体のしれない暗い感情がふつふつと湧き上がり、立ちくらみしそうだった。
「帰れ。これ以上お前に説明することはない」
きっぱりとミサキに言い放つ健吾。
ミサキはなおも健吾に詰め寄っていく。
「こんなんじゃ納得できない!
バカにするのもいいかげんにしてよ!
ほんとは殴りたいくらいムカついてるんだから――」
「じゃあ殴れよ」
「……え?」
空気が凍ったように静まり返った。



