緊張が走る。
この状況が何なのか、わからない。けど、ただならぬ雰囲気は感じ取れた。
あたしの前で足を止めたその人は、上から下まで値踏みするような視線を注いできた。
「ミサキ、手ぇ出しちゃだめだよ。まだ来てないんだから」
不快な笑いを含んだ声が響いた。
“ミサキ”と呼ばれたあたしの目の前の人は、「わかってるよ」と舌打ちをして、道路の方に視線をそらした。
この人たちは何がしたいんだろう。
呼び出しておきながら用件もいわず、この態度。
それに、“まだ来てない”って誰のこと?
「あの……」
言いかけたのと同時だった。
強烈なまぶしさが、目の前を一瞬覆った。
地面を震わすような、あの音が近づいてくる。
白くかすんだ視界に映る一台のバイク。
それは滑り込むようにコンビニの前まで来ると、あたしたちのそばで停まった。
あたしは無意識に、バイクから降りたその人の名前を口にした。
「……健吾」



