期待しちゃダメ。
勘違いしないって決めたんだから。
あいつがモテるのはわかっているし、ちょっと仲よくなったからって浮かれていたら、あとで絶対バカを見る。
そんなのは絶対に嫌だ。
でも……だったらどうして、あたしはK町に向かっているんだろう。
考え込んでいるうちに、電車が到着した。
改札を出ると大きな階段があり、繁華街へと続いている。
あたしは階段の前に立って街並みを見下ろした。
昼になら何度も来たことがある場所だけど、まるで知らない土地に放り出されたような感覚。
行きかう車から漏れる大音量の音楽。
派手な居酒屋の看板。
カラフルなのに、どこか濁った街のあかり。
あたしと同年代くらいの女の子たちが地べたに座り、男の人から声をかけられている。
酔って大声ではしゃぐ人や、ギターを弾きながら歌っている人もいた。
……初めて知った。
夜って、こんなに騒がしいものなんだ。



