足手まといにならないよう、必死に作業をこなすうち
いつのまにか時間は過ぎて終業時刻になっていた。
「莉子ちゃん、今日はほんとにありがとうね」
更衣室でシャツのボタンをはずしながら、真由ちゃんは命の恩人を見るような目であたしを見た。
「あんまり役に立てなかったけど」
「そんなことないよ! パパも、莉子ちゃんのおかげで助かったって喜んでたし」
「パパ?」
「うん。ヒゲ面のマスターがいたでしょ?」
「えっ? 真由ちゃんのお父さんだったの?
じゃあこのお店って、真由ちゃんち?」
驚くあたしに、真由ちゃんは「言ってなかったっけ?」と小首をかしげる。
「聞いてないし」
「そっかぁ~ごめん。あはは」
あはは、って……。ほんと、彼女のマイペースさは時々うらやましくなるほどだ。



