【莉子ちゃん、こないだから学校休んでるけど大丈夫? 心配してるので返信ください】
 

真由ちゃんから届いたメールに返事も打たず、あたしは携帯を閉じた。
 

あれから……
何も変わらないまま、4日が経った。


泣きすぎて、何もかも現実感がない。


まわりの全てがぼやけて見えて。

自分の体は確かにここにあるのに、実感が伴わなかった。



あたしは眠れずに窓の外をながめた。


……月も星もなく、灰色の雲が広がるだけの、静かな夜。
 

そして

アパートの下に、たたずむ人影を見つけた。



「健吾……!」



どうして? 
会いに来てくれたの……?
 

あたしはすぐにコートをはおり、部屋を飛び出した。


アパートの外の階段がカンカンと高い音を立て、それに気づいた健吾が顔を上げた。



「よぉ」
 

暗闇の中、はにかむ健吾の顔。


4日前の出来事がウソみたいな健吾の態度に、胸騒ぎがした。



「どうしたの、こんな夜中に……?」


「うん、ちょっとな」


「………」
 


あたしたちはアパートの塀に背中を預けて、しゃがんだ。


健吾はポケットから出した煙草をくわえ、火をつける。

最近はまったく吸っていなかったのに、いつの間にまた吸うようになっていたんだろう。


小さな赤い火が、ちりちりと燃える。

少しずつ灰になっていく。
 



……言葉にして言われなくても、あたしにはわかった。


もうこれで終わりだということが。



これ以上ふたりが一緒にいても、傷つけ合うだけ。


お互いを想う気持ちが強ければ強いほど、傷つけ合うだけなんだ。