ふたりの体が離れ、冷たい空気が肌に触れた。
「莉子?」
突然の拒絶に、とまどった健吾の声。
おそるおそる伸ばされた手を、あたしは首を振って拒む。
そして両手で顔を押さえながら、あたしは言った。
「ごめん…なさい……。
やっぱり、できない……っ」
それはこの状況で、何よりも決定的な
終わりの言葉だった。
……あたしにはできない。
アキの想いを踏みにじったまま、自分だけ健吾の胸に飛び込めない……。
健吾はしばらく呆然としていたかと思うと、言葉もなくベッドを降りた。
そして、そばにあったグラスを、壁の写真めがけて投げつけた。
グラスは大きな音を立てて、砕け散った。



