長い口づけのあと、健吾の唇はあたしのあごを通って、首筋に下りていった。


あたしはうっすらと目を開けて、健吾の髪に触れた。

 

その瞬間だった。

壁に貼られた一枚の写真が、あたしの目に飛び込んだ。



それは健吾の誕生日に、みんなで撮った写真。


端っこに写るのは
アキの姿。
 

そして――

たった今、気づいてしまった真実。


「……っ」
 

どうして今まで気づかなかったんだろう。

ひとりだけカメラ目線じゃないアキが、どこを見ていたのか。



「……や…っ」


小さな悲鳴があたしから漏れた。



写真の中のアキは、カメラから視線をそらすように
ぶっきらぼうに斜め下を見ていて……
 

だけど、本当は
そうじゃなくて……



「……や…だ…っ」



本当は……

アキの目は――


あたしを見ていたんだ。




「……嫌ぁっ!! 
やめてっ、健吾……!!」
 


あたしは耳の裂けるような悲鳴を上げて

力いっぱい健吾を突き飛ばした。