鏡の前で前髪を整え、軽い足取りで出て行くお姉ちゃん。 ……金曜の夜7時。 シチューの甘ったるい匂いが充満する部屋に、あたし、ひとり。 別に、こんなの慣れっこだけどさ。 鍋の中のシチューを見てため息をつく。 お姉ちゃんの好物だから作ったのに。こんなのひとりじゃ食べきれない。 残しておけば、夜勤から帰ってきたお母さんが食べてくれるかな。 でもきっと、疲れてすぐ寝ちゃうから無理だろうな。 なんか……むなしいなあ。 そのとき突然、大きな音楽が鳴り響いた。 あたしの携帯の着信音だった。