「じゃあお兄さんは今日、お仕事で来られないとか……?」


あたしが尋ねると、サヨさんは少しだけ微笑んで、首を振った。



「昨年の夏に亡くなったの。
アキと同じ、心臓病で」
 


思いもよらない告白に、衝撃が走った。


アキと、サヨさんのお兄さんは

同じ病気と闘う仲間だったんだ。



「あ……あの……」


「あ、そんな顔しないで。うちの兄貴の場合、もともと長く生きられないって言われたし。

でもアキはそんなんじゃないから、心配いらないよ」


「そ、そうですよね。
手術は簡単なものだって、アキが言ってたし、大丈夫ですよね」
 


あたしは不安を吹き飛ばすように、明るくそう言ったのだけど。


こんどは、サヨさんの表情があからさまに曇った。



「それ……アキがそう言ったの?」


「え?」
 

何……? その反応。