売店の近くのソファに座ったあたしの前を
お医者さんや看護師さんが、あわただしく行き来していく。
「莉子?」
声をかけられたので見ると、お母さんだった。
「こんな所で何してるの? 学校も行かないで」
「……友達の」
手術を待ってる、という言葉がなぜか震えて出ない。
お母さんはあたしの態度から何か察したのか
隣に腰をおろし、手を握ってくれた。
「そんな不安そうな顔してたら、そのお友達が頑張れないわよ?」
「………」
「一緒に闘ってあげなさい」
お母さんはそれだけ言い残すと、すぐに勤務に戻って行った。
忙しいんだな……病院って。
こんな大変なお仕事をしながら、お母さんはあたしを育ててくれていたんだ。



