「待って! 聞いてほしいことがあるの!」 追いかけて叫ぶと、健吾は足を止めてくれた。 だけどふり返ったその顔には、恐ろしいほど表情がなかった。 「何の用だよ」 あかの他人に対するような、冷たい声。 あたしは、一瞬ひるみそうになる。 「あの……試験、がんばってね……」 「ああ」 「それでねっ。……終わったら、アキの病院に来てほしくて」 「なんで俺があいつの――」 「アキ、今日が手術なのっ」 健吾の眉間がぴくりと動いた。