やって来たのは、通い慣れたマンションの前。
チャイムを押す勇気のないあたしは、駐車場のフェンスの前にしゃがんで、健吾が出てくるのを待った。
正直、健吾の顔を見るのが怖い。
どんな態度を取られるのか、想像するだけで体が震えて、逃げ出したくて……。
「……あ…」
かじかんだ手の甲に、ふわりと白いものが落ちてきた。
この冬初めての雪。
やけに体が震えると思ったら、寒さのせいでもあったんだ。
きれいだなぁ……。
雪が舞う空を、見上げたあたしの視界に
マンションから出てきた、健吾の姿が映った。
「健吾っ!」
立ち上がったあたしを無視して、健吾は駅の方へと歩いて行く。



