「……早くアキんとこ、行けって」 地鳴りのような低い声がして 次の瞬間、耳を疑った。 「あいつとキスしてたじゃねぇかよ……!! 早く行けっ!!」 「――…っ」 やっぱり、見てたんだ。 あたしとアキのキスを見て それでも健吾は懸命に、知らないふりをしようとしてくれたんだ。 ショックで体が震える。 罪悪感に押しつぶされ、立っていられなくなる。 遠ざかる健吾の背中を見つめながら あたしは枯草のように、その場にへたりこんだ。