その言葉を聞いて、心のどこかでホッとした。 よかった、キスを見られたんじゃなかったんだ。 そんな風に考えてしまった、最低なあたし。 「なんでって、見ての通り入院だけど?」 アキが小首をかしげて答えた。 「ふざけてんのか?」 「こんな状況でふざけねーし」 まるでわざと健吾を怒らせるような、挑発的なアキの態度。 健吾はギリッと奥歯を噛むと、白い壁を拳で殴りつけた。 鈍い音が響き、あたしは思わず体をこわばらせた。