ひたすら健吾だけを求め、見つめ続けてきた、これまでの日々。
だけどあたしのそばには、いつもアキの存在があった。
泣かされたこともあるけれど、誰よりも大好きな健吾。
どんなときもそばにいて、あたしを守ってくれたアキ。
アキの病気を知って同情してるわけじゃない。
健吾を好きな気持ちには、寸分の揺らぎもないって言いきれる。
でも、真実を知らなかった頃には、戻れないんだよ……。
「――莉子」
名前を呼ばれたあたしは、ハッと正気に戻った。
「メシ、食わねぇのか?」
ちっとも減っていないオムライスを見て、健吾が言う。
ここは学食。
あの出来事から一夜明け、あたしは当たり前のように、日常の中にいた。
「あ、うん……。あんまりお腹空いてなくて」
あたしは作り笑いでごまかして、食器を返却棚に持っていく。



