「そりゃあ退屈だよね~。
友達にお見舞いに来てもらえば?」
「やだよ。心配されんのとか面倒じゃん」
顔は見えないけれど、今、アキがどんな表情をしているのかは想像できた。
きっといつものように涼しい顔で
こんなの何でもないっていう風に、笑っているんだ。
「ねえ、本当にこのまま、みんなに隠し続けるつもりなの?」
サヨさんが言うと、アキの返事まで少し間があった。
「うん。俺の手術の日って、健吾の大学入試だし。
あいつ、あんな性格だから、受験どころじゃなくなりそうじゃん」
「……莉子ちゃんにも、言わないつもり?」
「莉子にだけは、絶対に言わねーよ」
あたしは、弱虫だった。
現実と対峙する勇気がなかった。
アキとサヨさんの話を聞いているうちに、怖くなって……
病室に入ることもできず、逃げてしまったんだ。



