病室がある5階まで来ると、アキのお母さんは
「505号室だから」
と言い残し、再びエレベーターに乗って降りて行った。
あたしはひとりで病院の廊下を歩き、アキがいる病室を目指した。
自分の足で歩いているはずなのに、まるで体が機械になったように、実感がなかった。
505号室の前までたどり着いたとき、
「思ったより顔色がよくて、安心したよ」
中から聞き覚えのある声が聞こえ、あたしは足を止めた。
この声……サヨさんだ。
サヨさんはアキの病気を知ってたの?
じゃあ……
“アキをよろしく”
あの不可解な言葉の意味は、これだったんだ……。
「俺、今かなり体調いいんだよね。
なのに入院生活とか、マジで退屈すぎ」
ドア越しのアキの声に、胸が締め付けられる。



