「以前、莉子ちゃんが酔いつぶれた日――
眠ってる莉子ちゃんを、アキがずっとそばで見守っていてね。
そのときの顔があんまりにも優しかったから、
“もしかしてアキの彼女?”
って尋ねてみたのよ」
「………」
「そしたらあの子、笑って答えたの……」
――『大切すぎて
手なんか出せねーし』
「……親って、子どものことを何も知らなかったりするのね。
いつの間にあの子は、あんな優しい顔ができるようになったのかしら」
アキのお母さんが、どこか嬉しそうに微笑んだ。
「きっとアキは、莉子ちゃんに恋をして幸せなのね」



