「あたし……っ、全然気づかなくて、アキの力になるようなこと、今まで何ひとつ……っ」
「莉子ちゃんが自分を責めることじゃないのよ」
優しく首を振るアキのお母さんの顔が、かすかに歪む。
すべてが涙で、にじんでいく。
あたしはバカだ。
あんなにもアキと共に時間を過ごしていたのに
本当のアキの姿に、ちっとも気づかずにいたなんて。
だってアキは、いつも穏やかで。
まるですべてを受け流すような、涼しい顔をして。
苦しみを抱えている素振りなんか、まったく見せなくて……。
……“見せなくて”?
本当に?
本当に、そうだっただろうか。
あたしはふと、いつかのアキとミツルの会話を思い出した。



