「あの子ね、入院してるの」
「……え?」
「生まれつき心臓が弱くて」
ドン、と何かで強く突かれたような痛みが、あたしの左胸に走った。
無意識にその場所を手で押さえると、ドクドクと激しい鼓動が手のひらに伝わった。
心臓。
……今、たしかに心臓って言ったよね?
「幸い、軽度のものだから、日常生活にはほとんど支障ないんだけど。
将来のことを考えて、手術に踏み切ることに決めたのよ」
「でも、アキはそんなこと、あたしに一言も……」
聞き取れないほど震えた声で言うと、アキのお母さんの瞳はさらに寂しげになった。
「あの子、誰にも言わないって決めていたから」
「……誰…にも?」
「ええ。さすがに学校の先生にだけは報告してるんだけど」



