「西沢総合病院までお願いします」
アキのお母さんが運転手さんに言った言葉に、ビックリするあたし。
「そこ、あたしの母が働いてる病院です」
「……そうなの?」
「はい、母は内科に勤めてるんですけど、毎日忙しくて大変らしくて。でもこのあたりだと一番大きな病院だから――」
意外な偶然が嬉しくて、つい、まくしたててしまったけれど。
ふと、胸に疑問が芽生え
それは急激にふくらんだ。
「えっと……どうしてアキに会いに行くのが、病院なんですか?」
アキのお母さんは唇だけで微笑んで、寂しげな瞳をした。
ざわつくような胸騒ぎがあたしを襲う。
アキのお母さんの、弱々しい微笑みの向こう側で、町の景色が流れていく。
「あの……?」
沈黙が怖いと思った。
何か話してほしかった。
だけどなぜか
聞くのも怖いと思ったんだ。



