「卒業したら、板前の修行することにしました!」
全員が同時に「えっ!?」と叫んだ。
シンさんが板前?
想像つかない。
ていうか、真剣に就職を考えているそぶりすら、今まで見せなかったのに。
驚きを隠せないあたしたちに、シンさんは少し照れくさそうに言う。
「俺んち、親父も兄貴も料理人なんだ。
だから俺も昔から料理は好きだったんだけどさ。
なんっつーか、親父らと同じ道に進むのはダセェ、なんて思ってて。
でも最近はちょっと、それもいいかな……なんて思うようになったんだよな。
目標があるのって、いいじゃん。みたいな」
言葉には出さなかったけど、その想いの裏側に、健吾の存在があることは伝わってきた。
静かに微笑みながら聞いていた健吾は、シンさんの腕にパシッとパンチを入れる。
「早く一人前になって、うまいメシ食わせろよ」
「当たり前だっつーの」



