一時間目は美術の授業。
移動で廊下を歩いていると、すれ違う生徒たちから注目されているのがわかった。
“月島健吾と付き合っていながら、その親友とホテルに行った女”
たぶん、そんな噂が広まっているんだろう。
「矢沢さ~ん。俺ともホテル行ってよ~」
後ろから飛んできた、男子の野卑な声。
真由ちゃんはあたし以上にムッとした顔をした。
「何あれ、最悪。莉子ちゃん、気にする必要ないよ!」
「うん……。ありがと」
誰に何と言われても、わかってくれる友達がいればそれでいい。
だからあんな冷やかしは、無視して行こうと思ったのに。
「今ふざけたこと言ったやつ、誰だよ」
突然、健吾の声が割り込んできたもんだから、そうもいかなくなった。



