「アキ、待って!」
後ろから呼び止めると、アキは足を止めた。
ゆっくりふり返ったアキはいつもの無表情。
ずっとずっと、このポーカーフェイスの下で守られ続けてきたことを
あたしは今頃になって痛感するなんて……。
「アキ……どうして? どうしていつも、こんなに守ってくれるの?
あたし、アキに助けてもらってばっかりで……」
わかってる。
あたしがこんな風に聞いても、アキの答えは決まっているって。
きっといつものあの調子で
――『別にあんたのためじゃねーし』
――『あんたが、健吾の女だからだ』
って……。
「さぁ。なんでだろうな」
アキの口から、予想していたものと違う言葉が出た。
「昔はさ、俺が守りたいものは、健吾だけだったんだ。
……でも」
アキの華奢な手が、あたしの頭にそっと添えられる。
「守りたいものが増えるのって、いいもんだな」
「……っ」



